JEDEC(半導体技術協会)の定めるところの、TBW(トータルバイトライトン)を測定できるよう恒温装置を試作した。
ペルチェ素子を内蔵し、常に25℃に温度を保つ恒温箱だ。これでJEDECの定めるTBWを正確に追試できる。
JEDEC(半導体技術協会)が JESD218にてSSDの寿命を定めた。そればTBWだ。TBWとはSSDの動作を保障する総書き込み量だ。TBWが30TBの場合、30TBの書き込みまではSSDは動作を保障しますよという意味だ。
【 JESD218A:SSDの耐久性試験】
分類 | テスト時間 | 電源OFFでのデータ保持時間 | FFR(故障率) | 読み取りエラー率 |
クライアント(普通の使い方) | 40° C 8時間稼動/日 |
30° C 1年 |
≤3% | ≤10 -15 113テラバイトの読み取りで1ビット未満のエラー発生率 |
エンタープライズ(業務用) | 55° C 24時間稼動/日 |
40° C 3ヶ月 |
≤3% | ≤10 -16 1.1ピコバイトの読み取りで1ビット未満のエラー発生率 |
TBWの範囲内であれば、SSDに書き込んだデータは1年間はデータが消えない事を保障するものだ。厳密には温度30℃と既定している。
JEDECはSSDの耐久性ガイドラインJESD218を定めるにあたり、この表を元したようである。この図はANANDATECが掲載していたものだ。1年間(52週)とは図によると40℃でSSDを使用し、30℃で保管した時の保持を保障する期間となる。であるから25℃でSSDを使用し、55℃で保管した時は1週間のデータ保持を保障する。書き込み温度、保存温度によりキメ細かく保存温度を決めている。
本サイトはこの表に従い検査できるよう保温箱を作るものである。
1.恒温装置の試作
本サイトが実施している加速寿命試験にこの表を採用する事にする。そのためにはSSDの温度を厳密に管理する必要がある。そのために恒温箱を作った。
これがそうだ。ケースはペルチェ素子を内蔵ししている。ケースの上段のファンはペルチェ素子の発熱側の放熱装置だ。ケースの内部に入っている放熱板とファンは冷却用のものだ。
これはペルチェ素子のユニットだ。ペルチェ素子の両側に冷却フィンとファンが着いている。大きいほうが廃熱側だ。小さいほうは吸熱側だ。吸熱側が冷たくなる。
このユニットに電気を流しっぱなしだと丁度良い具合に温度を保てないのでサーモスタットを付ける。サーモスタットはペルチェ素子のスイッチをON/OFFしてケース内の温度を保つ。
これを使用した。熱帯魚用のサーモスタットで温度センサーの入ったプローブが指定温度を超えるとコンセントのスイッチが入るようになっている。
ケース内には2つの温度計が入っている。一つは今24.4℃と表示している温度計のプローブが入っている。もう一つはペルチェ素子の電源を管理するサーモスタットだ。本来、温度計は不要なのだが念のために入れる。以外に思うかもしれないがデジタル温度計というのは実は不正確なのだ。正確なのは表示だけでセンサーは調整をしないと誤差が多い。気を抜くと平気で数度の誤差が出る。ということで多めに入れた。
これは現在、恒温装置に入れているSSDだ。分解し、このようなゴツイ冷却フィンをつけている。こうしないとSSDの内部温度が上昇して 表の温度どうりにならない。放熱を良く考えているSSDで室温に対して+10℃、そうでないもので25℃の温度上昇が起きる。25℃でSSDを使用するためにはSSD側にもこのような工夫が必要になる。
2.55℃の恒温装置の確保
SSDを書き込む時の恒温とは別に、55℃の温度で1週間保管する恒温装置を用意した。タニカのヨーグルトメーカが65℃まで温度設定ができるのでドンぴしゃりだった。
これがそうだ。現在、キングストン SSD Now UV300 /240G, SK Hynix SL300 HFS250G32TND-3112A, Crucial BX200 CT240BX200SSD1が中に入っている。
3.今後の加速寿命テストのガイドライン
2つの恒温装置の投入より次の手順を逐次とる。
- SSD装置本体の温度が25~30℃を維持してデータを書き込む。
- 30TB, 72TBの書き込みが終わった時点で一週間55℃の恒温箱にて保管する。
- 一週間後データの保持を確認する。
- データ化けが起きればそこでテスト終了。正常ならば継続して書き込み試験を続ける。
本サイトではTBW=40TBが必要十分であると提示する。
Windowsの節電機能の一つハイバネーションという機能がある。メモリが高く、ハードディスクが安かった時代の機能である。ハードディスクを多様してPCの起き上がり時間を速くする仕掛けだ。PCが完全にスリープするとハイバネーションが発生すると全メモリをディスクに書き込む。これを加味してディスクへの書き込み量を試算してみよう。
【 SSDへのデータ書き込み量目安】
ハイバネーションON 搭載メモリ4GB |
ハイバネーションON 搭載メモリ8GB |
ハイバネーションON 搭載メモリ16GB |
ハイバネーションON 搭載メモリ32GB |
ハイバネーションOFF | |
1日の推定書き込み量 | 12GB+10GB | 24GB+10GB | 48GB+10GB | 96GB+10GB | 0GB+10GB |
1年の推定書き込み量 | 8TB | 12.4TB | 21TB | 38.7TB | 3.6TB |
※1.ハイバネーションは一日3回発生すると仮定する。朝PCを起動し、打ち合わせが午前一回、午後一回、昼食時と合計3回ハイバネーションが発生すると仮定している。
※2.一日のディスクへの書き込みは10GBと仮定している。ヘビーユーザで10GBというのが本サイトの見解である。おそらく多くはその半分の5GBくらいだろう。
ハイバネーションがOFFの時、年間3.6TBしか使用しない。10年耐久すれば良いとすればTBWは36TBあれば良い事になる。ヘビーユーザで四捨五入して約40TBあれば十分である。このようなわけで本サイトは40TBあればヘビーユーザで10年間は十分であるという見解をとっている。
SSDユーザはハイバネーションOFFが常識であり、ONにする時は消耗を承知して実施するべきである。本サイトではOFFを推奨する。
ワンタッチでハイバネーションをOFFにするツール「SSD最適化設定」を無料配布している。ハイバネーションだけでなく各種SSD関連の設定も自動、半自動で行う。是非活用されたい。